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遺産分割の基礎知識

遺産分割の手続をご相談いただきたい理由

相続が発生してから、大半の方にとって必要となるのが、この「遺産分割」手続です。全相続事案に対する90%超のケースが円満な遺産分割によって、手続が完了してます。
ですので、当事務所でも最も多くの相談解決事例が遺産分割に関するものです。
一口に「遺産分割」といっても、いろんなケースがあります。ご兄弟やご相続人の人数が多いとか、それぞれの相続人が遠方に居住しているとか、相続人の間で相続についての意見が食い違っているとか。それぞれの場合に、それぞれ適切な解決方法や手続への取り組み方があります。
当事務所では、そのようなご相談にいらっしゃる方の多くから、いろいろなご相談を承って、適切妥当な解決方法、手続の円滑な進め方などをアドバイスしたうえで、ご依頼をいただいて、円滑、円満、迅速に解決しております。

よくある事例

「兄弟全員と話をして、長男が全部相続して他の兄弟は『放棄』することになりました。」これを単純に、「放棄」という言葉だけを捉えて、民法に規定する「相続放棄」としてしまうのは、早計な判断だと思います。
これを解釈して、「共同相続人全員で、遺産分割協議を行い、その結果、長男が相続財産全部を取得し他の共同相続人には取得分がなかった。という協議が成立した。」こととして、「相続放棄」手続ではなく、「遺産分割」手続を行うべきだと捉え直すのが、多くの場合に妥当な判断なのです。
なぜなら、法律上の「相続放棄」とは、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して、相続放棄の申述申立を行い、受理されたものに限るからです。また、「相続放棄」を行うと放棄をした相続人は、相続財産に対するすべての権利を失うことになるので、その効果まで認識していらっしゃるかどうか、ご相談者様のご意向をよく伺う必要があるのです。

遺産分割協議とは

相続が開始して相続放棄も限定承認をしないで3カ月が過ぎると、単純承認したことになり、被相続人が死亡時に有していた一切の権利・義務を相続人が法定相続分に応じて相続することになります。この遺産の共有状態を解消して、個々の財産を各相続人に分配し取得させる手続きが遺産分割です。
一般的に相続手続というと、この遺産分割協議による手続が最も多いと思います。遺産分割の時期については、相続開始後であればいつでもよく、法律上の期限は特にありません。被相続人が遺言で分割を禁止していないかぎりいつでも自由に分割を請求することができます。
しかし、相続税の申告に際して、相続税の配偶者税額軽減の適用を受けるには、遺産分割完了していることが前提となっていますし、また、あまり時間が経ちますと遺産が散逸したり、相続の権利のある関係者が増えていくなど、複雑になってきますので、なるべく早い時期に分割協議を行ったほうがよいでしょう。
なお、遺言で遺産の分割方法の指定がされている場合には、遺言に従うことになります。

遺産分割協議の手続

協議による分割遺言がない場合や、あっても相続分の指定のみをしている場合、あるいは、遺言から洩れている財産がある場合には、まず、共同相続人の間の協議できめます。
遺産分割協議をする場合には、必ず相続人全員で協議しなければなりません。一部の相続人だけで行った遺産分割協議は無効です。相続人全員の合意があれば、必ずしも遺言による指定相続分や法定相続分に従う必要はありません。
また、ある人の取得分をゼロとする分割協議も有効とされています。
すべての相続財産について、一度に全部を協議する必要はなく、一部の遺産についてだけ協議し、そのほかの財産の協議を保留することも可能です。例えば、相続税を納付するためにまず預金の相続手続だけをすすめて、現金化するような場合です。
遺産分割協議については、方式に制限はなく、書面によらず口頭ですることも可能ですが、実際には手続等で必ず書面が必要となりますし、後日の証拠を残すためにも遺産分割協議書として書面に残した方がよいでしょう。
共同相続人間で協議がまとまらないときまたは協議をすることができないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求することができます。家庭裁判所への請求は調停、審判のいずれを申し立てても差し支えありませんが、通常はまず調停を申し立てます。調停が成立しない場合は当然に審判手続きに移行します。

分割の態様

遺産自体が現金や預金など分割しやすいものであればいいのですが、不動産などの分割しにくいものであると中々大変です。
遺産を分割する方法としては、以下のような3つの方法があります。

現物分割

「自宅の土地家屋は配偶者に、預貯金は子供に」というように遺産をあるがままのかたちで分割する方法。

換価分割

不動産など、遺産の一部または全部を売却して、そのお金を相続人で分ける方法。

代償分割

遺産の全部または一部を現物で相続人中の1人または一部の者に取得させ、その代わりに、他の相続人に不足分を代償金として支払うという方法。
※代償分割する場合には、遺産分割協議書にその旨を記載したほうがよいでしょう。

(参考)代償分割した場合の相続税

代償金を支払った相続人 相続により取得した財産-代償金
代償金を受取った相続人 相続により取得した財産+代償金